色、色々
ケ芝はぼーっと前に座っている男の後頭部を見ていた。
その男はと言うとそれに気づいていたが無視をしている、殺気も嘲りも何も無いただの視線。
たまに汁物をすする音がするが、視線は常に後頭部にある。
「〜〜・・あのなケ芝、俺の後頭部幾ら見ても変形したり破裂したりしねぇよ。わかったら見ンな
飯が不味くなるだろうが。」
「ん?あぁ、その巻いてる布は見てたけどお前の頭は見てない、気にすンな。」
張苞は呆れたように溜息をつくと茶碗を置いて振り返った。
「俺の頭に巻いてんだから視線が痛いんだよ。男にじっと見られても鳥肌立つだけだ気持ち悪い。」
「気持ち悪いとは失礼だ」
「なら見ンな」
「はいはい」
ケ芝は呆れたように肩を竦めると目の前の飯に集中しだした。
やれやれと体を元に戻すと今度は目の前に座っていた関興が見ている。
「なんだお前まで、俺の頭に何があるってんだよ」
「いや・・ケ芝が思ってた事がわかったから。」
「言ってみろ」
「なんでお前ン家は赤いんだ?」
「・・・・・は?」
「確かに他の隊も色がある。関家は蜀の色をそのまま受け継ぎ御納戸色。お前ン家は金赤。
馬超殿は花浅葱、黄忠殿は黒鳶。そして子龍叔父上は白ー・・・しかしお前ンとこだけだ頭に巻いてる
布が赤いのは。他の隊は皆式典以外は蜀の御納戸色じゃないか。」
指摘されて始めて気付いたというように軽く頷いた。そのくらいこの男にとっては頭の赤い布は当たり前だったのだ。
「あぁ・・・これかー・・・俺のこれは親父の形見だし願掛けのようなつもりだったんだが、そういや
なんでだったんだっけな?幼い頃聞いたんだが・・」
張苞は目を閉じて古い記憶に思いを馳せた。関興は箸を伸ばすと、張苞の皿から焼売をつまみあげそのまま租借し
何も無かったように茶を飲んだ。
「翼徳叔父上のことだから皆と同じが嫌だったんじゃないか?」
張苞はうーんと唸りながら再び箸を伸ばしてきた関興の手をピシリと叩いた。
「それもあるだろうが・・なんだっけな、もっと違う深いわけがあったような?確か母上から聞いたのだが」
「んじゃ後で伯母上に聞いてみるか」
関興は叩き落とされた手を擦りながら、勝気で気が強いが優しく美しい叔母が好きだったのでついて行こうか
手土産買っていこうかと思考を廻らせた。
「・・そういや母上も赤好きだったな、父上にもらったとかいう赤い珊瑚のついた簪をいつもつけてるし。」
確かに叔母はいつも頭に安物の赤い簪をつけていた。あれはきっと金が無い頃翼徳叔父上が四苦八苦して
買い与えたのだろう。それを今でも大切につけていると思うと胸の内が温かくなるようである。
「ふぅん・・・・それじゃないか?夏侯家だから」
「あぁ、魏の色。」
「そう。」
「譲歩してるのか知らないが大胆だな」
最大の敵である敵勢力の色を身につけるなどとんでもない話だが、それだけに父の母を思う強さと強い意志を感じる。
「よく玄徳伯父上も許したよな。」
「それだけ父上は母上の事大事だったんだな、我が父ながら一途な事だ。」
張苞は勝手な結論ながら納得して振り返った。
「と、言う事だ。わかったかケ芝?」
「いや、俺は趙将軍はなんで布巻かないのかなと・・将軍巻いてないから俺も巻かないでいいのかとか考えてた。」
「「・・・あっそ。」」
関興と張苞は呆れたようにそう言うと残った自分達の飯をまたもそもそと食い始めたのだった。
*あとがき*
色は勝手にこじつけたので適当に読み流してくださいね。なんで張苞だけ赤いんだ、そういや張飛も赤かったなと思って
勝手にこじつけただけなんで。他の将の色は着ていた服の色からです。趙雲は服も白かったし馬印も御納戸色と白だったんで。
魏は黒と赤だったんで。安直ですけども。
あと関係無いですけど伯母と叔母どっちがどっちだっけと調べたら上に対して伯、下に対して叔で、うん・・?なんか
見た事あるぞと思ったら字の排行が伯・仲・叔・季・・となってくから、多分伯母というのもこれからきたんじゃないかなーと
思ったんですよ!そう思うとなんか面白いですよねー。でもだとしたらなんで仲じゃないんでしょうね。
あとそれ調べてるときにもう一つトリビア知ったんでそれも。子龍の子というのは字でよく用いられる敬称だそうですよ。
だから趙雲子龍という名前は『龍は雲を呼ぶ』という意味の名前だそうです。なんかカッコイイですね!ケ芝は伯苗
なので長男という事がわかりケ芝伯苗は『苗が育ち芝になる』で繁栄を祈る名前なのではないでしょうかね。ちなみに
馬超孟起は私にはよくわかりません。なんなんだろう・・?羌族の字のつけかたなんですかね??
なんか長くなってすいませんアトガキなのに!なんか感動したんで・・本当無駄知識だけど・・